鎌倉 F邸


北東西側には山々の稜線を借景とする風景が広がる敷地である。

自然に囲まれた魅力的なロケーションでありながら、西側にはお墓が隣接し、南東には隣家が近接しているなど、いくつかの環境的な制約も抱えた敷地でした。

この「恵み」と「制約」の両面をどう調和させるか。

それが、この住まいをかたちづくる上での大きなテーマとなりました。

私が目指したのは、周囲の自然を最大限に取り込みながらも、

家族が安心して過ごせる「静かで心地よい居場所」をつくること。

そのために、視線や音、気配に対して丁寧に向き合いながら、設計を重ねていきました。

リビング・ダイニング・キッチンは、山並みの借景を楽しめる2階に配置しました。

外の風景に向かって空間を開き、家族が自然とつながる、伸びやかな居場所となるように意図しています。

一方、1階にはよりプライベートな空間を設けつつ、西側のお墓や隣家からの視線を遮るように設計を工夫しています。

植栽の配置などを通して、視覚的な干渉を和らげ、落ち着いた時間が流れる空間に仕上げました。

この住まいの中心には「中庭」を設けています。

中庭は、内と外の境界をやわらかくつなぐ場所。

外に開きすぎることなく、閉じすぎることもなく、ほどよい距離感で自然と寄り添う空間です。

中庭を囲むように、ホール、寝室、洗面、浴室などの機能を配し、2階のLDKもこの中庭を軸に展開することで、家の中に自然な一体感が生まれました。

2階のリビングからは、テラスを介して中庭につながるように計画しています。

そのテラスの先には山々の景色が広がり、光や風がやわらかく室内を通り抜けます。

一方で、プライバシーを確保するために、テラスには腰壁や袖壁を設け、外部からの不要な視線はしっかりと遮る工夫も欠かしていません。

こうして生まれた中庭を中心とした構成は、空間に奥行きと変化をもたらしながら、

家族の暮らしをやさしく包み込んでくれます。

外の風景とつながりながらも、しっかりと守られたプライバシー。

自然と共に暮らしながらも、どこか安心感のある静かな空間。

この家は、家族がそれぞれの時間を大切にしながら、自然の恵みを感じる中で心地よく過ごせる場所として設計されています。

内と外、静けさと開放感、すべてが調和し、家族の暮らしが自然と寄り添う、温かい空間がここに息づいています。




DATA


竣工    :2023年

用途    :専用住宅

構造    :木造軸組 2階建


設計    :スターホーム株式会社 在籍時担当作品 < 担当 / 松野 >

構造設計  :馬場貴志構造設計事務所

施工    :スターホーム株式会社

写真    :東涌宏和

T.A.E.architect

T.A.E.architect 一級建築士事務所

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