葉山 T邸


この敷地は、幅約5メートルの細長いアプローチを持ち、奥へと伸びた先でL字に折れ曲がる少し変わった形をしています。

さらに折れた先では敷地の幅がさらに絞られ、奥行きがわずか2メートルほどしか取れない部分もあるなど、法的な制限も含めて、建てられる範囲が限られた場所でした。

また、隣家が境界線いっぱいまで建っているため、建物の配置には細やかな配慮が求められました。

そんな敷地に暮らすクライアントは、マリンスポーツを日常的に楽しまれている方。そこで、海辺での活動から直接アクセスできる水まわりを設けることが、設計の大切なテーマのひとつになりました。

アクティブな趣味と日々の暮らしが自然につながるように、外から室内への動線を丁寧に計画しています。

住まいの中心となるリビングは、できるだけ道路から離れた静かな場所に配置しました。

車の音や人通りなど、外の喧騒から距離を取り、落ち着いた時間を過ごせるようにするためです。

また、隣家との距離が非常に近いこの環境では、光や風をどう取り入れるかが重要な設計ポイントとなりました。

現地で光の入り方や周囲の建物の様子を細かく観察し、プライバシーを守りながらも、やわらかな自然光が室内に届くように配慮。

大きな開口部は控えめにし、小さな窓を点在させることで、まるで木漏れ日のように光がやさしく広がる空間を目指しました。

面積に限りがある中でも、必要な機能をしっかりと納めるために、寝室はクライアントと何度も相談を重ね、キングサイズのベッドと最小限の収納だけに絞ったコンパクトなつくりとしました。こうして生まれた凝縮された寝室と、天井を高く設けた開放感のあるLDKとが対比をなすことで、空間にリズムとメリハリが生まれています。

リビングは変形しており決して広いとは言えない空間ですが、天井高の工夫や開口部の取り方により、実際以上の広がりと心地よさが感じられるようになりました。

限られた条件の中で、どれだけ豊かで快適な暮らしを描けるか。そんな問いと向き合いながら、一つひとつ丁寧に選択を重ねて形にした住まいです。




DATA


竣工    :2023年

用途    :専用住宅

構造    :木造枠組 2階建


設計    :スターホーム株式会社 在籍時担当作品 < 担当 / 松野 >

構造設計  :BX TOSHO株式会社

施工    :スターホーム株式会社

写真    :東涌宏和

T.A.E.architect

T.A.E.architect 一級建築士事務所

0コメント

  • 1000 / 1000